01 / PROLOGUE
視線
「え……?」
背中に、ぞくりと冷たいものが走った。
私は反射的に、ミニスカートの裾を押さえた。
誰かに見られている。
そう感じたのだ。
すぐに振り返る。
けれど——
そこには、誰もいなかった。
私の名前は、泉 早紀。
都内で働く、ごく普通のOLだ。
ただ、ひとつだけ。
少し前から、私には悩んでいることがある。
視線だ。
大人になってから、男性の視線にはそれなりに慣れた。
街を歩いていれば、振り返られることもある。電車の中で、不躾な視線を向けられることだってある。
気分のいいものではない。
でも、それとは違う。
この視線だけは、明らかに何かがおかしい。
どこから見られているのか分からない。誰が見ているのかも分からない。
それなのに、確かに感じる。
まるで服など最初から存在しないかのように、身体の奥まで見透かされている——
そんな、生々しい感覚。
振り返っても、誰もいない。周囲を見渡しても、私を見ている人はいない。
それでも、視線だけは消えなかった。
電車の中でも。
会社でも。
帰り道でも。
そして、自分の部屋にいる時でさえ。
いつからだろう。
私は四六時中、“何か”に監視されている。
そんな気がしてならなかった。

——このときの私は、まだ知らなかった。
その視線の主が、人間ではないことを。


